事業承継の認定は取り消される?例外規定を知っておくと安心です

事業承継の場面では、「都道府県知事の認定」という言葉が出てくることがあります。これは、会社の株式を後継者へ引き継ぐときに、贈与税や相続税の納税猶予などの支援を受けるために必要となる大切な認定です。
ただ、この認定は一度受ければ永久に安心、というわけではありません。一定の条件に該当すると、認定が取り消される場合があります。
そう聞くと、「せっかく認定を受けたのに、後継者に何かあったらどうなるのか」「病気や介護状態になって代表者を続けられなくなったら、すぐに取り消されてしまうのか」と不安になる方も多いと思います。
ですが、そこにはきちんと例外規定が用意されています。人の体調や生活状況は、予定どおりにいかないものです。国の制度も、そのようなやむを得ない事情まで一律に厳しく扱うわけではありません。
認定取消しには例外がある
事業承継のために都道府県知事の認定を受けた後、後継者である経営承継受贈者や経営承継相続人が代表者を退任した場合、原則として認定取消しの問題が出てくることがあります。
事業承継税制は、簡単にいえば「後継者が会社を引き継ぎ、しっかり経営を続けていくこと」を前提とした制度です。そのため、後継者が代表者でなくなった場合には、制度の趣旨から外れるのではないかと判断される可能性があります。
しかし、後継者が代表者を続けられなくなった理由が、本人の重大な障害や重い介護状態など、やむを得ない事情によるものであれば話は別です。
そのような場合にまで「代表を退いたから認定取消しです」としてしまうと、あまりにも酷ですよね。そこで、一定の事情がある場合には、代表者を退任しても認定取消しの要件に該当しないものとみなされる例外が設けられています。
代表を続けられない事情がある場合は救済されることがある
認定取消しの例外として代表的なものは、後継者が重い障害や介護状態になった場合です。
具体的には、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた場合、身体障害者手帳の交付を受けた場合、要介護認定を受けた場合などが該当します。
ただし、どのような障害や介護状態でもよいというわけではありません。制度上は一定の重い状態に限られています。
たとえば、精神障害者保健福祉手帳については、障害等級が1級であるものに限られます。身体障害者手帳については、身体上の障害の程度が1級または2級であるものに限られます。介護保険法による要介護認定については、要介護5である場合に限られます。
つまり、後継者が会社の代表者として経営を続けることが難しいと考えられるような、相当に重い事情がある場合に、認定取消しの例外が認められるということです。
書類の提出が大切
ここで大切なのは、ただ事情があるだけではなく、その事情を証明する書類を都道府県知事に提出する必要があるという点です。
たとえば、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳、要介護認定に関する書類などが該当します。制度は書類で確認されるものですので、「実際に大変な状態だからわかってもらえるはず」と考えるのではなく、きちんと証明できる形にしておくことが重要です。
事業承継や相続の手続きでは、こうした書類の有無が後々大きな差になることがあります。特に、認定の取消しに関わるような重要な場面では、専門家に相談しながら早めに準備しておくと安心です。
「その他これに類する場合」もある
例外規定には、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳、要介護認定のほかに、「その他、これらに類すると認められる場合」も含まれています。
これは、制度上あらかじめすべての事情を細かく列挙することが難しいため、同じようにやむを得ないと認められるケースについても対応できるようにしているものです。
ただし、「その他」に該当するかどうかは慎重な判断が必要です。自分では似たような事情だと思っていても、行政側が同じように認めるとは限りません。
そのため、「これは例外に当たるのではないか」と感じた場合には、自己判断で進めず、税理士や行政書士など事業承継に詳しい専門家、または都道府県の担当窓口に確認することをおすすめします。
例外があっても注意すべきケース
例外規定があるとはいえ、すべてのケースで認定取消しを免れるわけではありません。
たとえば、民事再生法や会社更生法の規定により、管財人を選任する旨の裁判所の決定が確定した場合は、例外の対象から外れます。
つまり、後継者本人の障害や介護状態といった事情については救済の余地がありますが、会社自体が法的整理の段階に入っているような場合には、別の問題として扱われるということです。
このあたりは非常に専門的で、一般の方が条文だけを読んで正確に判断するのは難しい部分です。だからこそ、事業承継税制を利用している会社では、認定を受けた後も定期的に状況を確認しておくことが大切です。
特例制度にも準用される
この例外規定は、第一種特別贈与認定中小企業者や第一種特別相続認定中小企業者だけに限られるものではありません。
第二種特別贈与認定中小企業者、第二種特別相続認定中小企業者、第一種特例贈与認定中小企業者、第一種特例相続認定中小企業者、第二種特例贈与認定中小企業者、第二種特例相続認定中小企業者にも準用されます。
言葉だけを見るとかなり難しく感じますが、要するに、事業承継税制のさまざまな類型においても、同じような考え方で例外が認められるということです。
制度の名前が複雑だからといって、そこであきらめる必要はありません。大切なのは、「認定取消しには原則があるが、やむを得ない事情がある場合には例外もある」と理解しておくことです。
事業承継は“受けた後”の管理が大切
事業承継税制というと、どうしても「認定を受けるまで」「贈与や相続を実行するまで」に意識が向きがちです。
しかし、本当に大切なのはその後です。
認定を受けた後も、後継者が代表者であり続けているか、株式を継続して保有しているか、会社の状況に大きな変化がないかなど、確認すべきことは多くあります。
そして、今回のように後継者が病気や障害、重い介護状態になってしまった場合には、認定取消しの問題が出てくる可能性があります。
ただし、すぐに「もう制度は使えない」とあきらめる必要はありません。一定の条件を満たし、必要な書類を提出すれば、認定取消しの要件に該当しないものとして扱われる場合があります。
まとめ
事業承継の認定は、後継者が会社を引き継いで経営を続けることを前提とした制度です。そのため、後継者が代表者を退任した場合には、認定取消しの問題が生じることがあります。
しかし、後継者が精神障害者保健福祉手帳1級の交付を受けた場合、身体障害者手帳1級または2級の交付を受けた場合、要介護5の認定を受けた場合、またはそれらに類する事情がある場合には、例外的に認定取消しの要件に該当しないものとされることがあります。
大切なのは、やむを得ない事情が生じたときに、放置しないことです。必要な証明書類を準備し、都道府県知事へ提出することが求められます。
事業承継は、会社と家族の未来を守るための大きな手続きです。制度を使うときは、入口だけでなく、その後の管理や万が一の対応まで考えておくことが、安心につながります。
「認定が取り消されるかもしれない」と不安になったときほど、早めの確認が大切です。制度には例外があります。正しく知って、正しく備えることで、大切な会社と財産を守る選択肢は広がります。
※この記事は税理士事務所の見習いスタッフが日頃の業務で感じたことや素朴な疑問をコラムとして掲載しております。念のため専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は責任を負いかねますので、個別具体的な案件に関する疑問やご相談がある場合には、弊所代表税理士「うめちゃん先生」まで直接問い合わせを頂くか、「お問合せフォーム」からお問合せ下さい。無料相談会も随時実施していますので(完全予約制)お気軽に活用ください。
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