事業承継に活用できる金融支援制度とは――株式取得・納税資金・保証制度をわかりやすく解説

事業承継の場面では、後継者や会社が資金面で大きな負担を抱えることがあります。とくに、株式の取得や事業用資産の承継、相続税や贈与税の納付などは、多額の資金を必要とすることが少なくありません。こうしたときに活用できる制度の一つが、経営承継円滑化法に基づく金融支援です。
この制度には、大きく分けて二つの支援策があります。一つは中小企業信用保険法の特例で、もう一つは日本政策金融公庫法等の特例です。いずれも、事業承継を円滑に進めるために必要な資金調達を後押しする仕組みですが、それぞれ内容が異なります。
まず、中小企業信用保険法の特例についてです。この特例では、都道府県知事の認定を受けた中小企業者が、事業に必要な資金を金融機関から借り入れる際に、信用保証協会の保証枠が通常より広がる仕組みが設けられています。通常の保証枠に加えて特別枠が設けられるため、事業承継に関する資金調達がしやすくなるのが特徴です。たとえば、普通保険では通常2億円以内の保証に加えてさらに2億円以内の特別枠が用意され、合計4億円以内まで保証を受けることができます。無担保保険や特別小口保険についても同様に、通常枠とは別に特別枠が設けられています。
さらに、制度改正により「特定経営承継関連保証」も創設されました。これは、事業承継に伴って中小企業者の代表者個人が株式や事業資産などを取得する際に必要となる資金について、保証を受けられる制度です。対象となるのは、経済産業大臣または都道府県知事の認定を受けた中小企業者の代表者個人です。承継した会社の経営を続けていくために必要な株式取得資金などが対象となり、貸付限度額は最大2億8,000万円です。保証期間は、運転資金なら10年以内、設備資金や運転設備資金なら15年以内とされており、いずれも据置期間を含めることができます。融資を受ける際には、通常の信用保証申込書類に加えて、都道府県知事の認定書の写しなどが必要になります。
もう一つの大きな支援策が、日本政策金融公庫または沖縄振興開発金融公庫による融資制度です。こちらは、認定を受けた中小企業者の代表者に対して、経営の承継に伴って必要となる資金を貸し付けることができるという特例です。たとえば、認定中小企業者等以外の者から株式を取得するための資金や、事業活動の継続に必要な資金が対象になります。また、まだ事業を営んでいない個人であっても、都道府県知事の認定を受けていれば、他の中小企業者の経営を承継するために必要な資産取得資金などについて融資を受けることができます。
この融資制度で対象となる資金の使いみちは、事業承継の実務に即したものが幅広く想定されています。たとえば、相続によって承継した債務のうち、会社の事業用資産を担保にした借入金を返済するための資金が含まれます。また、先代経営者の死亡や退任に伴い、会社以外の者が保有する株式や事業用資産を取得するための資金も対象です。さらに、遺産分割や遺留分の問題に対応するため、後継者が他の相続人に支払う代償金や価額弁償金の支払い資金も含まれます。
そして、贈与税納付との関係で特に重要なのが、納税資金も融資対象に含まれている点です。先代代表者の死亡または退任によって経営を承継した後継者が、相続や遺贈、あるいは贈与によって取得した株式や事業用資産にかかる相続税または贈与税を納付するための資金についても、この制度を利用できる可能性があります。事業承継では、資産を引き継いだ後に税負担が重くのしかかることがあり、納税資金の準備が経営の安定に直結します。そのため、この融資制度は単なる資産取得のためだけでなく、承継後の事業継続を支える役割も果たしています。
このほかにも、事業活動の継続に特に必要と認められる資金であれば、対象となる余地があります。制度の柔軟性は比較的高く、実際の承継場面に応じた活用が期待できます。
融資条件について見ると、直接貸付の限度額は7,200万円で、そのうち運転資金は4,800万円までとされています。融資期間は、設備資金であれば20年以内、運転資金であれば10年以内で、いずれも一定の据置期間を設けることができます。長期での返済計画を立てやすい点は、承継直後の資金繰りに不安を抱える後継者にとって大きな利点といえるでしょう。
また、事業を営んでいない個人についても、一定の条件のもとで支援対象となります。たとえば、他の中小企業者が持つ事業用資産を取得するための資金や、会社の株式を取得して議決権の過半数を握ることになる場合の株式取得資金などが対象になります。つまり、これから事業承継によって経営者となる予定の個人にも、制度の利用可能性が開かれているのです。
このように、経営承継円滑化法における金融支援は、事業承継のさまざまな局面で必要となる資金に対応する制度として整備されています。単に株式の取得資金を補うだけではなく、債務返済、遺産分割への対応、さらには相続税や贈与税の納税資金まで視野に入っている点が大きな特徴です。事業承継を検討する際には、税制面だけでなく、こうした金融支援もあわせて確認することで、より現実的で無理のない承継計画を立てやすくなります。
※この記事は税理士事務所の見習いスタッフが日頃の業務で感じたことや素朴な疑問をコラムとして掲載しております。念のため専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は責任を負いかねますので、個別具体的な案件に関する疑問やご相談がある場合には、弊所代表税理士「うめちゃん先生」まで直接問い合わせを頂くか、「お問合せフォーム」からお問合せ下さい。無料相談会も随時実施していますので(完全予約制)お気軽に活用ください。
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