合併すると事業承継の認定はどうなる?認定が消えるケースと引き継げるケースをやさしく解説

事業承継のために、都道府県知事から金融支援の認定を受けている会社が、合併によって消滅することがあります。
このとき、多くの経営者の方が気になるのは、
「せっかく受けた認定はどうなるのか」
「合併後の会社にそのまま引き継げるのか」
「認定がなくなると、支援に影響が出るのではないか」
という点ではないでしょうか。
特に、贈与によって後継者へ株式を移している途中の会社や、事業承継税制・金融支援を意識して経営を進めている会社にとって、認定の扱いはとても重要です。合併は会社法上の組織再編のひとつですが、事業承継の認定との関係では、単なる会社の形の変更では済まない場合があります。
今回は、「第一種特別贈与認定中小企業者」が合併で消滅した場合に、都道府県知事の認定がどうなるのかを、できるだけわかりやすく整理していきます。
原則として、合併で消滅した会社の認定は効力を失う
まず大前提として、第一種特別贈与認定中小企業者が合併によって消滅した場合、その会社が受けていた認定は原則として効力を失います。
つまり、認定を受けていた会社そのものが合併でなくなる以上、その認定も一緒に消えてしまう、という考え方です。
ここはとても大切です。
「合併したのだから、当然に新しい会社や存続会社へ認定も移るだろう」と考えてしまうと危険です。制度上は、何もしなければ認定は自動的には引き継がれません。
事業承継の場面では、後継者が株式を引き継ぎ、金融支援や税制上の制度を前提に資金計画を立てていることもあります。そのため、合併によって認定が消えてしまうと、思わぬところで計画に影響が出る可能性があります。
ただし、ここで終わりではありません。
一定の要件を満たし、必要な手続きを行えば、合併後の会社が認定中小企業者としての地位を引き継いだものとみなされる例外があります。
例外として、存続会社が認定の地位を承継できる場合がある
合併によって認定を受けていた会社が消滅したとしても、吸収合併存続会社などが一定の要件を満たし、そのことについて都道府県知事の確認を受けた場合には、合併の効力発生日に、認定中小企業者としての地位を承継したものとみなされます。
少し専門的な言い方になりますが、要するに、
「合併で元の会社は消えるけれど、後継者による経営支配や会社の実態がきちんと続いているなら、一定の条件付きで認定を引き継げる」
というイメージです。
これは、事業承継の実態を守るための例外規定と考えるとわかりやすいです。
ただし、重要なのは「一定の要件を満たしていれば自動的にOK」というわけではない点です。都道府県知事への報告と確認が必要になります。合併を実行したあとに慌てて確認するのではなく、事前に専門家と相談しながら、要件を満たせるかどうかを確認しておくことが大切です。
認定を引き継ぐために重要なポイント
認定の地位を引き継ぐためには、いくつかの要件を満たす必要があります。条文上は細かく定められていますが、経営者目線で見ると、特に大切なのは次のような考え方です。
まず、もともとの認定会社の後継者である「第一種経営承継受贈者」が、合併後の存続会社でも代表者であることが求められます。代表権を制限されているような形では足りません。
これは、事業承継の制度が「後継者がきちんと会社を引き継いで経営していること」を前提としているからです。合併後に後継者が経営の中心から外れてしまうのであれば、制度の趣旨から外れてしまうわけです。
次に、合併の対価にも注意が必要です。
原則として、吸収合併存続会社等の株式等以外の財産が交付されていないことが求められます。簡単にいうと、合併によって現金やその他の資産が広く交付されるような形になると、単なる事業承継というよりも、財産の移転や換金に近い性質を帯びてしまう可能性があるためです。
もちろん、剰余金の配当等として交付される金銭や、合併に反対する株主の買取請求に基づく対価など、一定のものは除かれています。しかし、合併対価の設計は非常に重要ですので、ここは専門家による確認が欠かせません。
さらに、後継者とその同族関係者で、合併後の会社の議決権の過半数を持っていることも求められます。加えて、後継者本人が持つ議決権数が、同族関係者の中で最も少ない状態であってはいけません。
これは、後継者が名ばかりではなく、実際に会社の意思決定に強い影響力を持っているかを確認するための要件です。
事業承継では、形式上は後継者が代表者になっていても、実際には親族や別の株主が支配しているというケースもあり得ます。制度としては、そのような形ではなく、後継者がしっかり経営の主導権を持っていることを求めているのです。
上場会社・風俗営業会社・資産保有型会社などは注意
認定の地位を承継するためには、合併後の存続会社が一定の不適格な会社に該当しないことも必要です。
具体的には、上場会社等、風俗営業会社、資産保有型会社に該当しないことが求められます。また、吸収合併の場合には、合併効力発生日等の翌日の属する事業年度の直前事業年度において、存続会社が資産運用型会社に該当しないことも要件とされています。
ここで気をつけたいのが、いわゆる「資産保有型会社」や「資産運用型会社」です。
事業承継の支援制度は、基本的に実際に事業を営む中小企業の承継を支えるためのものです。そのため、不動産や有価証券などの資産を多く保有しているだけの会社や、資産運用が中心となっている会社については、制度の対象としてふさわしいかどうかが厳しく見られます。
資産家の方や、複数の会社を持っているオーナー経営者の場合、グループ内再編や不動産管理会社との合併を検討することもあるかもしれません。しかし、合併後の会社の資産構成や収入構造によっては、認定承継の要件に引っかかる可能性があります。
「事業会社同士の合併だから大丈夫だろう」と思っていても、貸付金、不動産、有価証券などの割合によって判断が変わることがあります。ここは慎重に確認したいところです。
特定特別子会社にもチェックが入る
合併後の存続会社だけでなく、その特定特別子会社についても要件があります。
具体的には、吸収合併存続会社等の特定特別子会社が風俗営業会社に該当しないことが求められます。
つまり、合併する会社本体だけを見ればよいわけではなく、一定の子会社の状況も確認されるということです。
グループ会社を複数持っている経営者の場合、親会社の事業内容だけで判断してしまいがちですが、制度上は子会社の内容も見られることがあります。事業承継や組織再編を検討するときは、グループ全体の事業内容や資本関係を整理しておくことが大切です。
合併前に確認すべきこと
この制度で一番避けたいのは、合併を先に進めてしまい、あとから「認定が承継できなかった」と気づくことです。
合併は、株主構成、代表者、対価の内容、資産状況、子会社の事業内容など、さまざまな要素が絡みます。しかも、事業承継の認定を維持できるかどうかは、その後の資金調達や相続・贈与対策にも影響する可能性があります。
特に、後継者に株式を贈与している途中の会社や、相続対策として事業承継税制や金融支援を活用している会社では、合併の設計段階から認定の承継を意識しておく必要があります。
合併後の存続会社で後継者が代表者になるのか、議決権の過半数を確保できるのか、合併対価に現金等が含まれないか、資産保有型会社や資産運用型会社に該当しないか。
これらは、合併契約や株主構成を決めてからでは修正が難しくなることもあります。
だからこそ、合併を検討し始めた段階で、税理士や弁護士、事業承継に詳しい専門家に相談することが重要です。
他の贈与認定中小企業者にも同じ考え方が使われる
今回の内容は、第一種特別贈与認定中小企業者についての話ですが、同じような考え方は、第二種特別贈与認定中小企業者、第一種特例贈与認定中小企業者、第二種特例贈与認定中小企業者が合併により消滅した場合にも準用されます。
つまり、名称が少し違っていても、贈与に関する認定を受けている中小企業者が合併で消滅する場合には、「認定は原則として失効するが、一定の要件と確認により承継できる可能性がある」という基本的な考え方は共通しているということです。
ここも実務上は見落としやすいポイントです。
自社がどの種類の認定を受けているのかを正確に把握したうえで、合併時にどの規定が関係するのかを確認しておきましょう。
まとめ:合併は認定の承継まで考えて進めることが大切
第一種特別贈与認定中小企業者が合併によって消滅した場合、その認定は原則として効力を失います。
しかし、合併後の存続会社等が一定の要件を満たし、都道府県知事の確認を受けた場合には、認定中小企業者としての地位を承継したものとみなされます。
大切なのは、合併そのものだけでなく、「認定を引き継げる形になっているか」まで事前に確認することです。
事業承継では、税金や資金繰り、株式の移転、経営権の安定など、さまざまな問題が同時に動きます。合併は便利な組織再編の手段ですが、認定の承継を考えずに進めてしまうと、せっかく整えてきた承継計画に影響が出るおそれがあります。
経営者や資産家の方にとって、事業承継は単なる手続きではありません。会社を次の世代へ無理なく渡し、家族や従業員、取引先を守るための大切な準備です。
合併を検討している場合は、「会社をどう残すか」だけでなく、「認定や支援制度をどう守るか」という視点も忘れずに持っておきましょう。
※この記事は税理士事務所の見習いスタッフが日頃の業務で感じたことや素朴な疑問をコラムとして掲載しております。念のため専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は責任を負いかねますので、個別具体的な案件に関する疑問やご相談がある場合には、弊所代表税理士「うめちゃん先生」まで直接問い合わせを頂くか、「お問合せフォーム」からお問合せ下さい。無料相談会も随時実施していますので(完全予約制)お気軽に活用ください。
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