Blog ブログ

Blog

HOME//ブログ//相続が始まったら何が起こる?事業主・資産家のための“相続のキホン”解説

相続ブログ

相続が始まったら何が起こる?事業主・資産家のための“相続のキホン”解説


相続というと、「税金がどれくらいかかるのか」「節税はできるのか」というところに目が行きがちですが、そもそも法律上は、相続が始まった瞬間に“何がどう引き継がれるのか”を知っておくことがとても大事です。ここが分かっていると、事業承継や不動産対策、将来の相続税対策のイメージがぐっとつかみやすくなります。ここでは、事業主や資産家の方に向けて、なるべく専門用語をかみ砕きながら、相続の「基本の仕組み」を整理しておきます。





まず、相続は「亡くなった瞬間」に自動的にスタートします。人は生まれたときから権利を持てるようになり、亡くなるとその権利能力が終わります。亡くなった方が持っていた財産や借金、契約上の立場などは、もはやその方自身には帰属できません。そのため、法律上は相続人にバトンが渡される仕組みになっていて、「相続が発生したと知っているかどうか」に関係なく、亡くなった時点から当然に相続が始まると考えます。





このとき、すべてが相続されるわけではありません。相続人が引き継ぐのは、亡くなった方の権利義務のうち、「一身専属権」と呼ばれる本人だけに意味がある権利と、先祖供養に関する特別な財産を除いたものです。一身専属権とは、たとえば本人の能力や人格と強く結びついたような権利で、これは相続の開始とともに消えてしまいます。一方で、所有権、不動産や預金、売掛金、借入金といった債権・債務、各種契約上の地位など、財産やお金に関わる部分は原則として相続人に引き継がれます。





少し特殊なのが、系譜(家系図など)、祭具(仏壇など)、お墓といった「先祖をまつるための財産」です。これらは通常の相続財産とは分けて考えられており、地域の慣習に従って「ご先祖の祭祀を主宰すべき人」が承継するとされています。被相続人が生前に「この人に任せる」と指定していた場合は、その指定を優先します。資産家のご家庭では、誰が仏壇やお墓を引き継ぐかが感情的な争いになりやすいので、できれば生前のうちに家族で話し合い、遺言などで整理しておくと安心です。





では、その相続財産に関して必要となる費用は誰が負担するのかというと、原則として「相続財産の中から」支払うことになります。たとえば、相続したアパートの管理費や修繕費、地代や家賃など、財産を維持・管理するために必要な費用がここに含まれます。ただし、相続税そのものは「相続財産に関する費用」には含まれません。相続税は、財産を相続によって取得した人に対して課税されるものであり、不動産の管理費などとは別枠と考えます。もし相続人の過失によって余計な費用が発生した場合、その分はその相続人だけが負担し、他の相続人は負担しない、というルールもあります。誰がどの財産を管理するのかをはっきりさせておくことが、ムダなトラブルを防ぐポイントになります。





以前は、相続財産の管理や保存について、家庭裁判所が関与する制度が段階ごとに用意されていましたが、共同相続人で遺産が共有になっている場合や、そもそも相続人がいるのかよく分からないような場合には、うまく対応できない面がありました。そこで令和5年4月1日からは、相続が始まりさえすれば、どの段階であっても家庭裁判所が「相続財産管理人を選ぶ」「保存のために必要な処分をする」といった対応ができるように制度が改められました。もし相続人が遠方にいたり、忙しくてすぐに動けなかったりしても、公的な仕組みで財産を守ることができるようになってきています。





相続人が一人だけなら分かりやすいのですが、複数人いる場合には、相続財産はいったん「みんなの共有」になります。つまり、不動産や預金などは、遺産分割が終わるまでは相続人全員のもの、という状態です。このとき、各相続人がどれだけの持分を持っているかは、法定相続分などに基づいて決まります。令和5年4月1日からは、この法定相続分などで計算された割合が、そのまま共有持分として扱われることが明確になりました。事業用不動産や自社株が兄弟姉妹で共有になってしまうと、売却や担保設定、経営判断などのたびに全員の同意が必要になることもあり、意思決定のスピードが落ちます。「節税できればそれで良い」ではなく、「誰にどの資産を集中させるか」という観点も、事業主や資産家にとっては非常に重要です。





また、共同相続で権利を引き継いだ場合、「第三者に対抗するための要件」にも注意が必要です。相続による承継であっても、法定相続分などを超える部分については、登記や登録といった手続きをしていないと、第三者に対して「これは自分の権利だ」と主張できないことがあります。たとえば、債権(売掛金など)を法定相続分以上に引き継いだ場合には、その債権に関する遺言の内容や遺産分割の内容を明らかにしたうえで、債務者に承継を通知することで、共同相続人全員から通知があったものとみなされます。こうした手続きは少し面倒に感じられるかもしれませんが、きちんとやっておくことで、将来の紛争や債権回収のリスクを大きく減らすことができます。





さらに、近年の大きなトピックとして、「相続した土地を国に引き取ってもらうことができる制度」が創設されました。令和5年4月27日に施行された「相続土地国庫帰属法」によって、相続や相続人への遺贈によって土地の所有権を取得した人が、条件を満たし法務大臣の承認を得れば、その土地の所有権を国庫に帰属させる、つまり国に引き渡すことができるようになったのです。背景には、使い道のない土地を相続してしまい、「固定資産税だけが重い」「遠くて管理できない」といった所有者の負担感が増し、結果として土地の管理が行き届かなくなっている現状があります。すべての土地が対象になるわけではなく、一定の条件や負担金もありますが、「どうしても使う予定がない、引き継ぎ手もいない土地」を整理したい場合の選択肢として知っておくと役立ちます。共有名義の土地についてこの制度を使う場合は、共有者全員で申請しなければならない点も重要です。





このように、相続が始まると、亡くなった方の財産や権利義務は、原則として相続人に包括的に引き継がれます。引き継がれるのは、不動産や預金だけでなく、借金や契約上の地位なども含まれます。一方で、本人にしか意味のない権利は消え、祭祀に関する財産は別ルールで承継されます。相続財産の管理や保存については家庭裁判所の制度が整備され、共同相続の場合には共有や登記・通知といった細かなルールが定められています。加えて、「不要な土地を国庫に帰属させる」という新しい制度もスタートしています。





節税や事業承継の対策を考えるときには、こうした「相続の仕組み」が土台となります。そのうえで、どの財産を誰にどのタイミングで渡すのか、遺言や生前贈与をどう組み合わせるのか、相続税や所得税・法人税まで含めてトータルでどう最適化するのか、といった具体的な戦略を検討していきます。ご自身やご家族の状況に合わせた最適なプランはケースごとに異なりますので、専門家と相談しながら、早めに準備を進めておくことをおすすめします。














目次

相続が始まったら何が起こる?事業主・資産家のための“相続のキホン”解説

SHARE
シェアする
[addtoany]

ブログ一覧