Blog ブログ

Blog

HOME//ブログ//事業主・資産家のための「遺留分の基礎財産」やさしい解説

相続ブログ

事業主・資産家のための「遺留分の基礎財産」やさしい解説


相続対策や節税対策を考えるとき、「そもそも何をベースに遺留分を計算するのか?」というポイントを理解しておくことがとても大切です。ここを押さえていないと、「生前贈与や事業承継のつもりで動かした財産が、後から遺留分侵害額請求の対象になってしまった」ということが起こり得ます。
今回は、事業主や資産家の方が悩みがちな「遺留分の基礎財産って何?どこまで含まれるの?」という点を、できるだけかみくだいて解説します。
【遺留分の基礎財産とは?】
遺留分の金額を計算するときは、亡くなった時点での財産だけを見るわけではありません。「相続開始の時点で持っていた財産の価額」に、「生前に贈与した財産の価額」を足し、そこから「債務の全額(借金や税金など)」を引いたものが、遺留分を計算するための土台になります。これを「遺留分の基礎財産」といいます。
イメージとしては、次のような流れです。
亡くなった時点で残っている財産を集計する → 生前に贈与して外に出した分を一定範囲で戻し入れる → そこから借金などを差し引く → その金額をもとに遺留分の計算をする、という順番です。
【相続開始時に持っていた財産に何が入るのか】
まず、「相続開始の時点で有していた財産」には、被相続人名義の積極財産が原則すべて含まれます。現金や預金、不動産、有価証券、自社株式、事業用資産などが典型例です。遺言で誰かに遺贈した財産も、この基礎財産に含まれます。
一方で、被相続人の「一身に専属する権利」といって、本人だけに意味があるようなものや、系譜・祭具・お墓の所有権などは、相続財産とは別扱いとされており、遺留分の基礎財産にも入らないとされています。
【生前贈与した財産はどこまで加算されるのか】
ここからが、事業主・資産家の方にとって特に重要なポイントです。生前贈与を活用して事業承継や節税を進める場合、その贈与が「遺留分計算の土台に戻ってくるかどうか」が、後のトラブルや納税資金の確保に大きく影響します。
相続人以外への贈与と、相続人への贈与とでルールが違います。
【相続人以外に対する贈与の扱い】
相続人以外、例えば孫、内縁のパートナー、第三者、法人などに対する贈与については、原則として「相続開始前1年以内に行った贈与」のみ、遺留分の基礎財産に加算されます。
ただし、贈与をした本人も受け取った側も「これをやると遺留分権利者に不利益が出るよね」と分かっていながら、遺留分を減らす目的で贈与したようなケースでは、1年以上前の贈与であっても基礎財産に加算されてしまいます。
なぜこうしたルールになっているかというと、二つのバランスを取るためです。
一つは、被相続人が生前贈与を使って財産を全部外に出してしまうと、遺留分権利者が何も受け取れなくなってしまい、遺留分制度の意味がなくなること。もう一つは、あまりに昔の贈与まで全て遡って計算対象にしてしまうと、受け取った側の取引の安全や法的安定性を害してしまうことです。
そこで、相続人以外への贈与については「原則1年以内、ただし悪質なケースはそれ以前も対象」という折衷案的なルールになっています。
【相続人に対する贈与の扱い】
相続人に対する生前贈与は、より広く遺留分計算の対象になります。特に、婚姻・養子縁組のための贈与や、独立資金・事業資金など「生計の資本」としての贈与は、いわゆる特別受益として扱われます。
この特別受益に当たる贈与については、原則として「相続開始前10年以内」に行われたものが、遺留分の基礎財産に加算されます。さらに、ここでも「遺留分権利者に損害を与えることを知って行われた贈与」の場合には、10年以上前の贈与であっても加算の対象となり得ます。
もし、何十年も前の贈与まで全て遡って計算することになると、受遺者や受贈者は、過去の贈与内容を正確に把握できず、思わぬ遺留分侵害額請求を受けるなど、不測の損害を被るおそれがあります。そこで、「10年間」という区切りが設けられているとイメージしていただくと分かりやすいと思います。
【事業承継での自社株式・事業用資産の贈与】
事業承継の場面では、経営者が後継者に対して、自社株式や事業用不動産・設備などを生前贈与することがよくあります。これは通常、「生計の資本としての贈与」と考えられ、特別受益に該当します。
そのため、相続開始前10年間に行った自社株式や事業用資産の贈与は、民法のルール上、遺留分基礎財産に加算されるのが原則です。つまり、亡くなった時点での残りの財産だけでなく、10年以内のこれらの贈与分も足し戻して遺留分を計算することになり、その結果として、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性も出てきます。
「後継者に株を早めに移しておけば、他の相続人は文句を言えなくなるだろう」と考えていると、ここで足元をすくわれることがありますので注意が必要です。事業承継税制などを活用する場合でも、遺留分の観点からのシミュレーションは必須だといえます。
【被相続人の債務はすべて控除される】
遺留分基礎財産を計算するときには、被相続人の債務を全額控除します。ここでいう債務は、金融機関からの借入金などの私法上の債務だけでなく、未払いの税金や社会保険料など公法上の債務も含まれます。
事業をされている方の場合、借入金やリース債務なども多くなりがちですので、「資産」と「負債」の両方を整理したうえで、正味の基礎財産がいくらになるのかを把握しておくことが重要です。
【基礎財産の評価はいつ時点の価格か】
遺留分の基礎財産をいくらと評価するかについては、原則として「相続開始時(亡くなった時点)」の客観的な価値、つまり時価・取引価格に基づいて評価することになります。
条件付きの権利や、存続期間がはっきりしない権利など、評価が難しい財産については、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って価格を定めることとされていますが、一般的な不動産や株式、現預金などは、その時点での時価で考えるイメージです。
【相続・節税を考えるうえでの実務的なヒント】
事業主・資産家の方にとって大事なのは、「どこまでが遺留分の土台に戻ってくるのか」を意識しながら、生前贈与や事業承継の時期・方法を設計することです。
例えば、後継者への自社株式の贈与や事業用資産の移転は、節税や承継の観点からは早めに動きたい一方で、遺留分の観点からは「相続開始前10年以内の贈与は原則として足し戻される」という前提があります。
また、相続人以外の方への贈与についても、「相続開始前1年以内」のものや、遺留分を害することをわかって行った贈与は、やはり基礎財産に加算されます。
このようなルールを踏まえたうえで、遺言の内容や生前贈与のスケジュール、保険の活用、持株会社や法人スキームの使い方などを組み合わせていくと、「遺留分で大きな争いにならない範囲で」「節税もしながら」相続設計をしていくことが可能になります。
実際にどこまで贈与が遡って計算されるのか、どの財産が基礎財産に入るのかは、ご家族の構成やこれまでの贈与歴、事業や資産の内容によって変わってきます。具体的な対策を検討される際には、税理士や弁護士など専門家と一緒に、遺留分と節税の両面からプランを作っていくことをおすすめします。














SHARE
シェアする
[addtoany]

ブログ一覧