税理士事務所見習いスタッフコラム【遺産分割編】相続人の中に行方不明者がいる場合、遺産分割協議を進めるためには何をすべきですか?
「え、行方不明ってドラマの話じゃないの?」って思っていたのですよ。ほんとに。
まさか相続の相談を受けているときに、「実は弟が10年前から音信不通でして…」なんて展開がくるとは思いませんでした。しかも、そんなときに限って遺産に不動産があったりして、「はい出ました、“遺産分割協議できません案件”。」
相続って、ただでさえ感情も財産も絡んで大変なのに、「人がいない」ってどういうこと!?って、最初はちょっとパニックになりました。でも、こういうケース、実は珍しくないのです。というか、じわじわ増えている印象すらあります。
相続人が複数いる場合、遺産をどう分けるかは「遺産分割協議」という話し合いで決めます。これは相続人全員の合意が必要。そう、“全員”ってところがポイント。1人でも欠けていたら、その協議は無効になるのです。
だから、どこかにいるはずの兄弟が、連絡もつかず、居場所も不明…という状況だと、協議そのものが進められません。相続税の申告には期限(基本的には10か月)もあるし、不動産の名義変更もできない。預金の解約も足止め状態。相続手続きがオールストップ。
…まるで、みんなでエスカレーターに乗ろうとしているのに、1人だけ改札通れてない、みたいな感じです。
で、困るのは、税務署に「行方不明で連絡がつかないので、申告ちょっと待ってもらえますか?」なんて通用しないこと。行方不明者がいようと、期限はちゃんとやってくる。相続税の申告が遅れると、加算税や延滞税のリスクもある。だからこそ、「行方不明の相続人がいる場合にどう動くべきか?」は、めちゃくちゃ大事な話なのです。
実際にあったというケースなので、お父さまが亡くなって、相続人は妻と子ども2人。ところが、そのうちの一人の息子さんが、音信不通歴15年。LINEも既読にならないし、住民票の住所に行っても空き家。家族でも連絡がつかないという状況でした。
「どうすれば…」とご家族が悩んでいたとき、私たちが提案したのが“不在者財産管理人の選任”です。
これは簡単に言うと、「その人の代わりに財産に関する手続きをしてくれる人を、家庭裁判所に選んでもらう」制度。
この申立てをすることで、行方不明者が相続人として協議に出席しているのと同じように、手続きを進められるのです。もちろん、財産管理人が勝手に決めていいわけではなくて、本人の不利益にならないよう、ちゃんと裁判所の監督下で進めます。
手続き自体はちょっと面倒で、申立書の準備や添付書類、印紙代や予納金(裁判所への前払い金)なども必要になります。でも、手詰まりになっていた遺産分割がようやく動き出す、ってなると、家族みんなが少しホッとするのですよね。
ちなみにこのケースでは、財産管理人の協力のもと、無事に協議書を作成でき、相続税の申告も期限内に完了したそうです。「めでたしめでたし。」
でもですね。ここでちょっと視点を変えてみてほしいのでが
「そもそも、行方不明にならないようにできなかったの?」っていう話。
もちろん、人生なにが起きるか分からないですし、連絡がつかなくなるのは本人の意思だけじゃどうにもならないこともある。でも、家族間で定期的に連絡を取り合っていたり、住所や連絡先を記録していたりすれば、防げるケースもあるのです。
最近は“エンディングノート”を用意する方も増えていますが、「誰がどこに住んでいて、連絡先はここ」という情報を残しておくのは、遺産分割の現場でもかなり役に立ちます。
また、万が一に備えて「遺言書」で相続の方向性をある程度決めておく、というのも効果的。
遺言書があれば、行方不明者がいても手続きがスムーズになることがあります(ただし、遺留分の問題なども絡むので要注意)。
要するに、相続のゴタゴタって、「事前の準備」である程度は防げるのですよね。
「うちは大丈夫」って思っていても、相続が起きた瞬間、意外なところでつまずくもの。だからこそ、元気なうちから少しずつ備えておくって大事なのです。
というわけで、「相続人に行方不明者がいる場合、どうすれば?」というお話でしたが、まとめると…
まずは家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任」を申立てること。
この手続きを踏むことで、行方不明者がいても遺産分割協議を進めることができます。もちろん、税務申告の期限を意識して、早めに動くことも重要です。
そして、なにより大事なのは、「事前の備え」。
家族の連絡先を整理する、遺言書やエンディングノートを残す、相続について少しずつでも話し合っておく…。これらの“小さな準備”が、将来の大きな混乱を防いでくれるのです。
行方不明者がいる相続って、ほんとにいろんな感情が交差します。「なんで今さら…」って思うこともあるし、「それでも家族なのだな」って思う瞬間もある。でも、感情は感情として、やるべきことは淡々と、でも丁寧に進める。それが私たち税理士事務所の役割だと思っています。
もし、同じような状況で悩んでいる方がいたら、ぜひ早めにご相談くださいね。
「見えない相続人」に振り回される前に、できることはたくさんありますから。
※この記事は税理士事務所スタッフが日頃の業務で感じたことや素朴な疑問をコラムとして掲載しております。念のため専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は責任を負いかねますので、個別具体的な案件に関する疑問やご相談がある場合には、弊所税理士「うめちゃん先生」まで直接問い合わせを頂くか、「お問合せフォーム」からお問合せ下さい。随時実施している無料相談会(完全予約制)もごお気軽に活用ください。
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