税理士事務所見習いスタッフコラム【外国編】海外で作成された遺言書は日本国内で有効と認められますか?
最近、このような質問があったそうです。
「うちの親父、ず~っとアメリカに住んでいたのだけど、向こうで書いた遺言書って、日本でも効くの?」
――え、それって実はけっこう大事な話じゃないですか?
警報がピコン!ピコン!と鳴っている状態です。これ、相続税の申告の現場でも、けっこう影響出ちゃうやつだそうです。
そもそも「海外で作った遺言書」と聞くと、なんとなく特別で、すごく複雑なものっていうイメージ、ありませんか?
「なんか全部英語で書いてあるっぽい」 「サインも日本のハンコじゃなくてサインだし」 「証人がいたのかもよくわかんないし」 「でも本人が書いたって言っているし、いちおう大丈夫…かな?」
――って、こんな感じで、モヤモヤしたまま放置されることも多い。
ですが、結論から言ってしまうと、
海外で作成された遺言書でも、日本国内で有効と認められるケースはあります。
ただし、「なんでもアリ」ではありません。ポイントは、“その遺言が日本の法律上、有効と判断されるかどうか”です。
ここ、ちょっと法律的な話になるので一瞬だけマジメモードに入りますね。
【法律的に言うと「方式の準拠法」】
日本の法律では、外国で作成された遺言書が有効かどうかは、「法の適用に関する通則法」という、ちょっとお堅めなルールに従って判断されます。
ざっくり言うと、「どの国の法律に従って作ったか」で有効性を見てくれるのですね。
具体的には、次のどれかの法律に合っていればOKとされることが多いです:
- 遺言者の本国法(その人の国籍がある国のルール)
- 遺言者の常居所地(ふだん住んでた国のルール)
- 遺言作成地(その遺言書を書いた場所のルール)
つまり、日本人がアメリカに住んでいて、アメリカの法律にのっとって遺言書を書いた場合、ちゃんとアメリカの方式に合っていれば、日本でも「この遺言は有効です」と認められることがあるのです。
このようなケースがあったそうです。
その方のお父さまが長年カナダに住んでいて、カナダで英語の遺言書を残されました。内容としては、
「自宅の財産はカナダの娘に、日本にある預貯金は日本にいる長男に渡す」
というものでした。しかも、ちゃんと現地の弁護士の立ち合いのもと、公証のような形で書かれたものでした。
で、日本側の相続人がその遺言書を持ってきて、「これで大丈夫ですよね?」と税理士に相談に行ったそうです。
が、ここで問題が。
その遺言書、確かにカナダでは有効だったのですが、日本の相続に必要な“遺言書の検認”をしていなかったのです。
日本の裁判所では、自筆証書遺言や外国で作成された遺言については、基本的に検認手続きを踏む必要があります(公正証書遺言を除く)。つまり、「これはちゃんとした遺言ですよ」と日本の家庭裁判所のお墨付きをもらわなきゃいけない。
なので、検認が済んでいない段階で、遺産を分けたり、名義変更したり、相続税の申告をしたりすると、あとで「いやいやそれ、遺言として無効では?」なんて言われかねません。
ちなみにこのケースでは、幸いにも内容に争いがなかったので、検認手続きもスムーズに進み、税務申告も問題なく完了したそうです。
実際には、こういう海外遺言のパターンでトラブルになること、けっこう多いそうです。
・「外国語のままで読めない」
・「翻訳文が不正確だった」
・「相続人が誰か把握できてない」
・「日本の相続税ルールに照らして計算しづらい」
などなど。
特に、税務署的に「これは本当に遺産を渡す意思があったのですか?」という点に疑問が出てくると、相続税の申告に対して修正を求められるケースも。
なので、「海外で作ったから特別」ではなく、「その内容と形式が日本で通用するかどうか」が大事なのです。
ここまで聞いて、「なんだか海外遺言って面倒くさそう…」って思った方、多いと思います。わかります。正直、専門家でも調査に時間がかかる案件のようですから。
でも視点を変えると、「海外でしっかり遺言を作っておくことは、相続人にとって大きな安心材料」でもあるのです。
というのも、遺言がなかったら、日本国内の相続人たちは、
- 財産の分け方について話し合い(これが大変)
- 誰が何を相続するかの協議書作成(やり直しも多い)
- 税務申告のための資料準備(地味に地獄)
と、けっこうな労力を強いられます。
それに比べて、たとえ海外であっても、遺言があれば「意思がハッキリしている」ので、手続きの進行がスムーズになるケースも多いのです。
というわけで、海外で作った遺言書が日本で有効か?という問いに対しては、
✅ 「有効になる場合もあるけど、ちゃんと法律に合っているかどうかが超重要」
✅ 「そのまま使えるとは限らないので、日本での手続きとの整合性を見ておくべし」
✅ 「翻訳・検認・税務との連携が必要なので、プロに相談したほうが安心」
ということのようです。この3つを覚えておいてもらえればOK。
もし、ご家族が海外在住だったり、国際結婚していたり、「親が海外口座を持ってそう」なんて方は、ちょっと早めに私たちのような専門家にご相談くださいね。
相続って、感情も絡むデリケートな話ですし、「あのときやっておけば…」が一番もったいないですから。
遺言書、紙一枚で人生変わる――なんて言うと大げさかもしれませんが、相続の世界ではけっこうリアルな話しなのです。
ではでは、今回はこのへんで。
お読みいただきありがとうございました!
相続のこと、気になることがあれば、気軽にご相談くださいね📩
※この記事は税理士事務所スタッフが日頃の業務で感じたことや素朴な疑問をコラムとして掲載しております。念のため専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は責任を負いかねますので、個別具体的な案件に関する疑問やご相談がある場合には、弊所税理士「うめちゃん先生」まで直接問い合わせを頂くか、「お問合せフォーム」からお問合せ下さい。随時実施している無料相談会(完全予約制)もごお気軽に活用ください。
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