税理士事務所見習いスタッフコラム【遺産分割編】養子縁組が無効とされる場合、それは相続にどのような影響を与えますか?
「え、あの人の養子ってウソだったの?」
相続のご相談を受けている中には、たまにこんなセリフが飛び出します。たとえば、ある日突然「実は亡くなった父には、籍だけ入れた“養子”がいたらしい」と聞かされて、驚いたご家族。さらに調べてみると、その“養子”が相続人として名乗りを上げてきた——。
でもね、その養子縁組がもし“無効”だったとしたら…? 相続は、ちょっとややこしいことになります。
今回は、「養子縁組が無効とされる場合、それが相続にどう影響するのか?」について、調べてみました
まずは、養子縁組の基本の「き」から。
法律上の養子縁組というのは、戸籍に「養子」と記載されることで成立します。そこにはちゃんとした手続きがあって、「お互いの合意」「適切な年齢差」「実親の同意(未成年の場合)」などなど、クリアしなきゃいけない条件があります。
だからといって、「戸籍に載っていればすべてOKか?」というと、そうでもないのが現実。
たとえば──
・実は本人が同意していなかった
・成年後見人が勝手に手続きをした
・親族間での財産狙いの“便宜的”な養子縁組だった
…みたいなパターンだと、「その養子縁組、無効じゃない?」って話になることがあります。
で、ここからが相続にとって本題です。
無効な養子縁組って、税務上も、法律上も「なかったこと」になってしまうのです。つまり、「相続人じゃないよね?」という扱い。
そうなると、相続の分け方や税額、さらにはすでに受け取った遺産の返還まで、いろいろな影響が出てくるわけです。
こんな事例もあったそうです。もちろん個人情報はぼかしています。
70代の男性が亡くなり、相続の相談が始まりました。奥様と長男、そして“養子”になっていたはずの男性(50代)。この“養子”さん、実は先代社長の弟で、「跡継ぎ問題がこじれて、形式上だけ養子にした」という過去があったそうなのです。
ところが、相続税の申告にあたって戸籍を調べてみると…あれ?
確かに「養子」としての記載はある。でも当時の書類を深掘りしてみると、「本人の同意書」がない。つまり、ちゃんとした手続きがされてなかった可能性が高い。
最終的にどうなったかというと、裁判所で「この養子縁組は無効」と判断され、“養子”だったはずの方は、相続人の立場を失いました。
ここで問題になったのが、「すでに渡してしまった遺産、どうする?」という点。
もちろん返還を求めることはできるけど、もうお金を使ってしまっていたら…?となると、もはや争いの火種でしかありません。
税務署としても、「あくまで有効な養子縁組が前提。無効とされたなら、その人に対する相続税の非課税枠も、適用除外です」となります。
つまり、「子ども1人増えたから、基礎控除もちょっと増えるよね〜」という想定が、全部吹っ飛ぶわけです。場合によっては、追徴課税や修正申告の対象にもなりかねません。
ここでちょっと視点を変えてみましょう。
養子縁組って、そもそも「人と人との家族関係」を築くための制度です。
でも、現実には
「節税になるから」
「不動産の共有を避けたいから」
「相続人が少ないから、誰か入れておこう」
みたいな“税務的メリット”のほうに意識が行きがちです。もちろん、それが全部悪いわけじゃありません。法律の範囲内で工夫することは、私たち税理士事務所の仕事でもありますから。
でも、形式だけ整えて中身がスカスカな養子縁組は、あとでツケが回ってきます。
特に最近は、税務署も相続税の調査にかなり熱心です。「名ばかり養子」がいないか? 「過去に不自然な養子縁組がされてないか?」といった点、よくチェックされています。
というわけで──
もしこれから養子縁組を考えているなら、あるいは「そういえばうちも養子がいたな…」と思い当たることがあるなら、一度ちゃんと確認しておいたほうがいいです。
・戸籍上の記載だけで安心していないか?
・必要な手続き、書類はちゃんと揃っているか?
・実態として、家族関係が築かれていたか?
これらをクリアして初めて「養子縁組が有効だった」と言えるのです。
もし「怪しいな」と思ったら、弁護士さんや司法書士さん、税理士にも早めにご相談ください。
なにより、家族でモメるのが一番疲れますからね。
相続って、ただの“お金の分け方”じゃないのです。そこには、人間関係と歴史が詰まっています。だからこそ、「手続きはしっかり、心はやわらかく」って姿勢がいちばん大事だと思います。
以上、税理士事務所の某スタッフが現場からお届けしました!
ではまた、次回のコラムでお会いしましょう〜。
※この記事は税理士事務所スタッフが日頃の業務で感じたことや素朴な疑問をコラムとして掲載しております。念のため専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は責任を負いかねますので、個別具体的な案件に関する疑問やご相談がある場合には、弊所税理士「うめちゃん先生」まで直接問い合わせを頂くか、「お問合せフォーム」からお問合せ下さい。随時実施している無料相談会(完全予約制)もごお気軽に活用ください。
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