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郊外住宅地で借地権を活用した相続税評価引き下げ術


はじめに





相続税は、大切な財産を次世代に引き継ぐ際に大きな負担となりがちです。特に土地の評価額が高い場合、相続税を納めるために不動産を手放さざるを得ないケースもあります。そこで注目されるのが「借地権」の活用です。借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有・利用できる権利のことで、この権利を上手に利用すると相続財産の評価額を引き下げる効果が期待できます。本記事では、郊外の住宅用地を中心に借地権を活用した相続税評価引き下げの仕組みやメリット、注意点について詳しく解説します。





借地権の基礎知識





借地権は簡単に言えば「土地を借りて家を建てて住む権利」です。一方、その土地の所有者が持つ権利は「底地権」と呼ばれます。土地に借地権が設定されている場合、土地は借地権(借りる側の権利)と底地権(貸す側=地主の権利)に分かれて扱われます。借地権は法律上もしっかり保護されており、借地契約がある土地は簡単に明け渡しさせられるものではありません。





普通借地権(更新のある従来型の借地契約)では借地人の権利が強く、地主から一方的に契約解除することは原則できません。そのため、地主にとって底地権だけを持つ土地は自由に使えず、資産価値や流動性が低下するデメリットがあります。一方で借地人は借地借家法に基づき契約期間中は建物利用が保証され、相続の際も借地権はそのまま相続人に引き継ぐことが可能です。つまり、借地権自体も相続財産の一部として評価・課税の対象になります。このように土地を「所有する権利」と「借りて使う権利」に分ける借地権ですが、この仕組みを相続税対策に活用できるのです。





借地権で相続財産評価を引き下げるメカニズム





土地の相続税評価額は、通常「路線価等×面積」によって算出されます。しかし、土地に借地権が設定されていると評価方法が変わります。貸宅地(借地権が設定された土地)の評価額は、借地権割合に基づいて次の式で計算されます。





借地権付き宅地の評価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合





簡単に言えば、更地の評価額から、その土地の借地権部分の価値を差し引いて評価するということです。例えば、ある住宅地の更地評価額が5,000万円で、借地権割合が60%の地域なら、その土地の評価額は5,000万円-5,000万円×60%=2,000万円になります。地主(底地権者)から見ると、借地権が付くことで土地評価額が更地の約40%にまで下がる計算です。





借地権割合は地域によって異なり、30%から90%の範囲で定められています。都市部では80%程度、郊外では50%前後が一般的です。つまり、郊外の住宅用地であれば、借地権を設定することでその土地評価額を半分程度に圧縮できる可能性があるわけです。





評価額が下がる根拠は、土地に制約がある場合には評価減を認めるという考え方で、借地権が付いていると「自由に使えない分だけ価値が低下する」という前提に基づいています。借地権付き土地(貸宅地)は、借地人がいるため更地と比べて利用制限があり、それが評価額に反映されるのです。





郊外住宅地における借地権活用の具体例





郊外の住宅地で実際に借地権を活用すると、どのような節税効果が得られるでしょうか。例えば、郊外に評価額1億円の土地を持つ人が、その土地に借地権を設定したとします。この地域の借地権割合が50%であれば、土地評価額は5,000万円に下がります。相続税の課税対象額も大幅に減少し、適用税率や税額が圧縮される可能性が高いでしょう。





ここで重要なのは、借地権の設定は特別な税制優遇ではなく、市場で通用する権利関係の構築に過ぎないという点です。郊外では地主が土地を貸し出し、借地人が家を建てて住むケースも多く、実務上も馴染みのある制度です。





ただし、借地権割合や地域の慣習によって、借地権の価値は異なります。辺鄙な場所では借地権の市場性が低く、評価も低くなりがちです。そのため、借地権活用による効果は、地域の不動産事情に応じて変動します。





借地権活用による節税メリットと留意点





節税メリットとしては、土地の評価額を大幅に引き下げることで、相続税の課税額を圧縮できることが挙げられます。建物を建てる必要がないため、他の不動産活用策よりもコストがかからず、契約書を取り交わすだけで効果が期待できます。





一方で、留意点も多くあります。まず、借地権を設定した土地(底地)は自由に使いにくくなり、売却もしづらくなります。一般の買い手にとっては使い勝手の悪い資産と映るため、売却時には大幅に価格が下がる可能性もあるのです。





また、契約内容をしっかり作り込む必要があります。親族間で借地契約を結ぶ場合には、名目的な契約とみなされないよう、地代の設定や契約書の整備が重要になります。税務署から実態のない契約と判断されると、借地権の評価が認められず、節税効果はなくなってしまいます。





借地契約には普通借地権と定期借地権があります。後者は更新がなく契約終了時に確実に土地が戻る仕組みのため、将来の計画が立てやすく、底地の価値も維持されやすい傾向にあります。どの契約形態を選ぶかは、目的に応じて慎重に検討する必要があります。





2024~2025年の法改正動向と節税策への影響





最近の相続税関連の法改正として注目されたのは、タワーマンション節税への規制強化です。高層階のマンション評価額が市場価格に見合わないほど低くなる仕組みが見直されました。





ただし、借地権に関する評価方法については、2024年時点で大きな変更はありません。借地権割合に基づく評価減の仕組みは引き続き維持されています。しかし、過度な節税スキームが問題視されている状況では、今後借地権の取り扱いにも改正の可能性がないとは言えません。





特に親族間での借地契約や、節税を意図した実態のない取引については、税務署から否認されるリスクがあります。常に正当な契約関係と実態を伴う活用が必要です。





また、相続税と贈与税の一体化や生前贈与加算期間の延長といった改正も行われています。借地権に関係する直接の改正はありませんが、全体としての資産移転に関するルールは厳格化の流れにあるといえます。





まとめ





借地権を活用して郊外の土地の相続税評価額を引き下げる方法について解説しました。土地を「貸す権利」と「借りる権利」に分けることで評価額を圧縮できるのは、税法上認められた仕組みに基づく正攻法の節税テクニックです。





ただし、借地権の設定には資産の流動性の低下や契約リスクなど、見落としがちなデメリットもあります。安易に節税目的で利用すると、かえってリスクを高めることにもなりかねません。





正しく活用するには、地域の実情を踏まえた借地権割合の確認、実態を伴った契約内容の整備、公正な条件の設定など、細やかな配慮が求められます。相続対策は評価額を下げることだけが目的ではなく、将来にわたって資産を有効活用し、円満に承継することがゴールです。





信頼できる税理士や不動産の専門家とともに、最新の制度を踏まえた計画を立てて賢い相続対策に取り組んでいきましょう。





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