事業承継を円滑に進めていく上でのテクニック(種類株式の活用)
1.はじめに
今回は実際に事業承継を円滑に進めていく上でのテクニックのうち、種類株式の活用についてご紹介致します。
2.種類株式の活用
平成18年に施行された現行会社法によって、種類株式活用の可能性が大きく広がりました。事業承継においてもこの種類株式を有効活用する事で、円滑に進めることができます。
種類株式とは、定款によってその種類ごとに異なる内容を定めた株式です。会社法では、以下の事項について異なる内容を定めることができるとされています。(会社法第 108 条)
(1)事業承継における種類株式の主な活用方法
事業承継においてはどのような種類株式が活用できるのでしょうか。
ここではそれぞれの活用方法について説明致します。
先代経営者の相続財産の大部分を株式が占める場合、後継者に株式を集中させると、他の相続人から遺留分の主張が行われる可能性があります。そのため、後継者には普通株式を相続させ、他の相続人には無議決権株式を相続させることで、遺留分減殺請求による株式(議決権)分散リスクの低減を図ることができます。
② 取得条項付種類株式
一般に経営者以外の株主が死亡した場合、相続により株式が分散してしまうことがあります。そこで、「株主の死亡」を取得条項における条件としておくことで、株主が死亡した場合には会社がこれを買い取ることとし、株式の散逸を防止することができます。 ただし、取得対価は分配可能額による財源規制を受けるため、注意が必要です。
③ 譲渡制限株式
譲渡制限株式は譲渡する際に会社の承認を必要とする種類の株式であり、 現在では多くの中小企業が、すべての株式を譲渡制限株式としています。 これにより、例えば経営者以外の者がその保有する株式を、経営者にとっては望ましくない第三者に売却しようとした場合、会社(株主総会や取締役会) はこれを承認しない判断をすることにより、株式の分散を防止することができます。
(2)種類株式の導入手続き
種類株式を導入するためには、株主総会の特別決議による定款変更が必要です。既発行の普通株式を種類株式に変更することも可能ではありますが、全株主の同意が必要です。種類株式の活用にあたっては、自社の状況や経営者の希望、株主の利益に配慮した適切な設計と慎重な導入手続きが大切です。また、種類株式の承継等に関する税務上の取扱いが明確でない部分も存在するため、早期に弁護士や税理士等の専門家にご相談ください。
SHARE
シェアする
[addtoany] シェアする