経営承継に伴う指導・助言の対象となる中小企業とは?制度のポイントを解説

経営承継に不安がある中小企業は指導・助言を受けられる
経営承継は、会社にとって大きな転換点になります。特に、代表者の死亡や退任などをきっかけに経営を引き継ぐ場合、会社の体制が大きく変わることがあります。
後継者への承継がうまく進まないと、従業員数の減少を伴う事業規模の縮小が起きたり、取引先や金融機関からの信用状態が低下したりする可能性があります。こうした状況になると、中小企業の事業活動の継続に支障が生じるおそれがあります。
そのような事態を防ぐために、都道府県知事や独立行政法人中小企業基盤整備機構は、一定の中小企業者の経営に従事する人に対して、必要な指導や助言を行うこととされています。
都道府県知事による指導・助言の対象となるのは、中小企業者の経営に従事する人で、経済産業省令で定める一定の要件に該当する者です。単に事業承継を予定しているというだけではなく、代表者の死亡等に起因する経営承継に伴い、事業規模の縮小や信用状態の低下などを防ぐために、計画的な取組みが特に必要である場合が対象になります。
ここで重要になるのが、多様な分野における事業展開、人材育成、資金確保に計画的に取り組む必要性です。経営承継は、株式や事業用資産を引き継ぐだけで完了するものではありません。後継者が会社を安定して経営していくためには、事業の方向性を整理し、人材を育て、必要な資金を確保することが欠かせません。
独立行政法人中小企業基盤整備機構も、中小企業の経営承継を円滑に進めるために、旧代表者や後継者、個人事業の先代事業者や後継者などに対して、必要な助言を行います。
ここでいう旧代表者とは、特例中小企業者の代表者であった者または代表者である者で、他の者に対して会社の株式や持分を贈与した人をいいます。また、後継者会社事業後継者とは、旧代表者から株式等の贈与を受けた人や、その人から相続により株式等を取得した人で、会社の議決権の過半数を有し、かつ代表者である人をいいます。
個人事業の場合にも、同じように承継支援の対象となることがあります。旧個人事業者とは、一定期間以上継続して事業を行っていた個人事業者で、他の者に対して事業用資産の全部を贈与した人をいいます。個人事業後継者とは、その事業用資産の全部を贈与または相続により取得し、その資産を自分の事業に使っている個人事業者をいいます。
また、中小企業基盤整備機構は、商工会や商工会議所の依頼に応じて、専門家の派遣など必要な協力も行います。事業承継は、法律、税務、金融、労務、経営計画など多くの分野が関係するため、専門家のサポートを受けながら進めることが重要になります。
会社や個人事業の承継計画が重要になる
都道府県知事の指導・助言の対象となる中小企業者には、いくつかの類型があります。
まず、会社である中小企業者が、経営を確実に承継するための具体的な計画を作成している場合です。この計画は、特例承継計画と呼ばれます。特例承継計画について、認定経営革新等支援機関の指導や助言を受けていることが前提になります。
この場合、会社には特例後継者がいることが必要です。特例後継者とは、現在の代表者または過去の代表者が死亡または退任した場合に、新たな代表者となる候補者であり、相続、遺贈、贈与によって株式等を取得することが見込まれる人をいいます。また、すでに代表者である人が、他の代表者や元代表者から株式等を取得することが見込まれる場合も対象になります。
特例後継者は、2人または3人以上いる場合でも、会社が定めた2人または3人までに限られます。複数後継者を想定する場合でも、誰を後継者として計画に位置づけるのかを明確にする必要があります。
さらに、会社には特例代表者がいることも必要です。特例代表者とは、株式等を承継させる側となる現在の代表者または元代表者をいいます。そして、その特例代表者が有する株式等を特例後継者が取得するまでの期間について、具体的な経営計画を持っていることが求められます。
加えて、特例後継者が株式等を承継した後5年間の経営計画も必要です。承継前だけでなく、承継後にどのように会社を経営していくのかまで計画しておくことが重要です。
次に、特例承継計画を前提とする会社や個人事業承継計画の対象となる個人事業者以外の中小企業者についても、一定の要件を満たす場合には指導・助言の対象になります。
この場合も、対象となる中小企業者は会社であることが必要です。また、上場会社等や風俗営業会社に該当しないことも求められます。
さらに、会社には特定後継者がいる必要があります。特定後継者とは、代表者や元代表者が死亡または退任した場合に新たな代表者となる候補者であり、株式等や事業用資産等を相続、遺贈、贈与によって取得することが見込まれる人をいいます。複数の候補者がいる場合には、その中から会社が定めた1人に限られます。
また、会社には特定代表者がいることも必要です。特定代表者は、株式等や事業用資産等を後継者に承継させる側の代表者または元代表者です。この特定代表者については、同族関係者と合わせて総株主等議決権数の過半数を有していることや、その本人が持つ議決権数が同族関係者の誰よりも下回らないことなどが求められます。
これは、事業承継の対象となる会社について、代表者側が実質的に会社を支配している状態にあるかを確認するための要件です。そのうえで、特定代表者が持っている株式等や事業用資産等を、特定後継者が支障なく取得するための具体的な計画を持っていることが求められます。
さらに、特定後継者に相続が開始した場合に、新たに特定後継者となることが見込まれる者がいることも要件とされています。つまり、最初の後継者だけでなく、その次の承継も見据えておく必要があるということです。
そして、これらの要件に加えて、その中小企業者が都道府県知事の指導・助言を特に必要としていることも求められます。事業承継に伴って経営上のリスクが大きい場合や、計画的な支援が必要な場合に、指導・助言の対象になると考えられます。
個人事業の場合には、個人事業承継計画が重要になります。これは、先代事業者の事業を確実に承継するための具体的な計画です。この計画について、認定経営革新等支援機関の指導や助言を受けている個人である中小企業者が、一定の要件を満たす場合に対象となります。なお、この中には、まだ事業を営んでいない個人も含まれます。
個人事業の場合には、先代事業者が死亡等したときに、その事業を承継する候補者であり、先代事業者から相続、遺贈、贈与によって特定事業用資産を取得することが見込まれる人が必要です。この人が個人事業承継者になります。
また、先代事業者が自分の事業を個人事業承継者に引き継ぐまでの期間について、具体的な経営計画を持っていることも必要です。さらに、個人事業承継者が事業を承継した後の経営に関する具体的な計画も求められます。
かつては、後継者を親族に限定する必要がありましたが、平成26年12月31日までの取扱いであり、現在は親族に限定されるものではありません。親族以外への承継を検討する場合でも、要件を満たせば支援の対象となる可能性があります。
このように、都道府県知事や中小企業基盤整備機構による指導・助言は、代表者の死亡や退任をきっかけとした経営承継によって、事業の継続に支障が出ることを防ぐための制度です。会社の承継でも個人事業の承継でも、重要なのは、誰が何をどのように引き継ぐのかを具体的な計画として整理しておくことです。
経営承継は、後継者が決まっていれば安心というものではありません。株式や事業用資産の移転、承継前後の経営計画、資金確保、人材育成、取引先や金融機関との関係維持など、検討すべきことは多くあります。早い段階から計画を作成し、必要に応じて専門家や支援機関の助言を受けながら進めることが大切です。
※この記事は税理士事務所の見習いスタッフが日頃の業務で感じたことや素朴な疑問をコラムとして掲載しております。念のため専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は責任を負いかねますので、個別具体的な案件に関する疑問やご相談がある場合には、弊所代表税理士「うめちゃん先生」まで直接問い合わせを頂くか、「お問合せフォーム」からお問合せ下さい。無料相談会も随時実施していますので(完全予約制)お気軽に活用ください。
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